科学の余白

2020年7月 1日 (水)

レジ袋有料化の科学(1)

 今日から、スーパー等でのプラスチック製レジ袋の有料化が施行される。これは法律に基づく新国策であり、その趣旨は、主として海洋プラスティック廃棄物の減量化のためと説明されている。※
 しかし、果たしてそのような立法趣旨は科学的に正確なのか、正確だとしても、有料化は科学的に適切な方法なのか、レジ袋の代替として推奨される「エコバッグ」は真実、エコロジカルなのか等々、様々な科学的疑問が浮かんでくる。そうした疑問を解決せずして、今日からエコバッグなる頭陀袋を下げて買い出しに行くことはできない。
 この問題は、同時進行中のCOVID-19対策とともに、暮らしに直結する科学的話題である。そこで、今回からしばらくは、不定期ながら、当欄でレジ袋有料化問題を取り上げていくことにする。


経済産業省ウェブサイトより

「プラスチックは、非常に便利な素材です。成形しやすく、軽くて丈夫で密閉性も高いため、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献しています。一方で、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。私たちは、プラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があります。

このような状況を踏まえ、令和2年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うこととなりました。これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。」

2020年6月27日 (土)

10段階式感染防止対策

 COVID-19感染拡大は北半球でも夏季に入りながら、一向に終息が見えず、各国ともCOVID-19の執拗さに苦慮している。「第二波」の到来が懸念されているが、現状は「波」というより、もはやCOVID-19が撲滅できない常在ウイルス化しているのではないかという予兆を感じさせる。
 そうなると、もはや感染拡大初期のような非常事態的な対策ではなく、常在化を前提とした対策を採るほかないだろう。その場合に重要なことは非常事態のようなオール・オア・ナシングではなく、ウイルスの毒性と流行の規模(世界的/全国的か、地域的か)・態様(市中感染か、院内/施設内感染か)に応じて細分化されたレベルを設定した対策を立てることである。
 このように政府・自治体の採るべき対策を予めレベルごとに細かく定めておけば、新種ウイルスのパンデミックのつど慌てて専門家を臨時にかき集めて右往左往する必要もなくなり、どのレベルの対策を発動すべきかについて、専門家に諮問すれば足りるだろう。
 具体的には、レベルを10段階くらいに細かく分け、ウイルスの毒性レベルが最大級で、健康な若年者でも大量死するような最強度ウイルスの全国的な流行に際しては、最大のレベル10を適用する。この場合は、罰則付きの外出制限措置もやむを得ない。
 他方、毒性はさほど強くないが感染力が強いウイルスの場合は、罰則なしの外出自粛要請で足りるが、特定の条件があると死亡率が高い場合―COVID-19はこれに近い―は、重症化要因のあるハイリスク者防護のための特別対策を取る必要がある。これはレベル7程度であろうか。
 いずれにせよ、初動で設定した比較的高いレベルから、流行の終息が近づくにつれ、徐々にレベルを低減させていき、最小限のレベル1を経て―終息が確認できない限り、最小限のレベル1ないしレベル2程度は維持する―、終息宣言・全面的解除へ至る仕組みである。
 その点、日本における対策の根拠法となっている「特措法」は10年前の新型インフルエンザに際して制定した間に合わせ立法の間に合わせ改正法にすぎず、レベル設定ができないオール・オア・ナシング対策である。この機会に、如上のような10段階式対策に全面改正することを提唱したい。

2020年6月20日 (土)

三都府県抗体検査結果をめぐって

 政府が今月16日に公表した東京・大阪・宮城の三都府県における抗体保有率の無作為抗体検査によると、東京都は0.1%、大阪府は0.17%、宮城県は0.03%となった。感染者数では全国トップの東京都ですら0.1%という数値は比較的に低いと認識されることから、この結果の解釈をめぐる議論が今後、活発化するだろう。
 その点、政府・自治体による対策が功を奏したとする解釈と、日本人にCOVID-19に感染しにくい何らかの生理的要因があるとする解釈の両様がある。後者は、「ファクターX」論として流布するようになっている。しかし、いずれの解釈にも、ご都合主義の気がある。
 前者は内外から批判のあった政府・自治体のPCR検査数抑制策の正当化に使える解釈であるし、後者は日本人優越論の亜種としてナショナリズムを刺激する効果がある。いずれにせよ、それらの解釈の科学的根拠が確実に証明されない限り、ご都合主義的解釈は、慢心と油断を招く危険がある。
 現時点では、最も厳しい悲観的解釈として、感染しても抗体が形成されていない可能性も視野に置く必要がある(そのような日本人特有の「ファクターZERO」の可能性も)。
 同時に、抗体保有者が比較的に少ないということは、感染スピードが存外に遅く、まだ感染が一巡していない可能性も想定される。考えたくないことだが、これから数か月、あるいは数年という時間的スパンをもってじわじわと拡大していく可能性もあるということである。

2020年5月27日 (水)

再び油断の危険

 政府がCOVID-19感染拡大防止のための緊急事態宣言を解除したことで、日本社会では振り子が再び油断に振れかけている。元来、緊急事態宣言のようなオール・オア・ナッシングの非弁証法的な対策は、人々を惑わす恐れが強い。特にナッシングの解除宣言を出すと、安全という印象が流布され、一挙にタガが外れやすい。
 それに加えて、日本では検査件数抑制策が情報操作の機能も果たしており、「諸外国に比べ、感染者数も死亡者数も極めて少ない」という意識が広く浸透している。これには、マスク着用習慣への過信や、科学的検証を経ない日本人特殊免疫論のような言説も助力しているだろう。
 
 しかし、現況はまだ安心できる段階ではない。箇条書きすれば、現況は以下のとおりである。

〇世界の現況
 世界の感染状況は、感染者数・死亡者数ともにアメリカが圧倒的中心であるが、南半球に遷移しつつあり、感染者数で世界第二位に躍り出たブラジルを中心とする南米やアフリカで感染者が増加中。

〇日本の現況
 *統計上の新規感染者数は長期的に減少しているが、ゼロが連続する状況にはなく、散発的な感染は継続中(再漸増傾向)。
 *PCR検査件数抑制策に加え、全国抗体検査も正式には未実施であるから、感染の全体状況は依然として不詳。
 *都道府県別の正式な抗体検査も未実施のため、居住地/勤務地/頻回訪問地周辺の地域的な感染状況も不詳。
 
 こうした現況に照らせば、政策的な思惑から操作される政府系情報や識者の自説PR的言説にはとらわれず、少なくとも、居住地/勤務地/頻回訪問地周辺における統計上の新規感染者数ゼロが最低でも2週間乃至3週間は継続しない限り、安全とみなすべきでないと考える。

2020年5月13日 (水)

弁証法的ノーマル

 COVID-19パンデミックはなお終息には遠いが、ある程度安定化を見せ始めている中、「経済と感染防止策の両立」が各国で課題化してきている。そのキーワードが、ニュー・ノーマルである。これは、対人距離戦略(ソーシャル・ディスタンス)を保持しつつ、日常を取り戻していくという考え方である。

 しかし、言うは易し、行うは難しである。元来、正常的な経済活動とロックダウンのような感染防止対策とは本質的に両立しない、相反する命題である。これまでのところは、新種ウイルスへの恐怖から振り子が感染防止対策のほうに大きく振れて、ロックダウンのような過激策に走る国が続出した。
 だが、その結果は、前例のない経済活動の総停滞である。大恐慌こそ回避されているように見えるが、株価のような資産経済への打撃が加わる以前に、まさに実体経済そのものが壊滅的状況に陥っており、その回復には歴史的長期間を要するか、このまま資本主義が崩壊するかの瀬戸際である。
 これを解決するには、経済と感染防止策の二律背反を止揚する弁証法的な解法によるほかなしというのが管見である。言わば、「弁証法的ノーマル」。具体的には、計画経済的手法の導入と感染ハイリスク者の重点的な防護という二策である。

 後者は「絞り込み政策」として、ちょうどふた月前に提唱したところと一致する。絞り込み政策は、感染防止策自体の弁証法的解法でもある。すなわち、集団免疫の獲得と感染拡大防止という二律背反命題の止揚である。
 集団免疫の獲得のために感染拡大を放置すれば、ハイリスク者の大量死を招くことになるが、他方でロックダウンのような方法で社会的総隔離をすると、集団免疫の獲得に時間がかかり、第二、第三の流行に対処できない。
 科学者の中には、ワクチンが開発されるまでは、第二、第三波が起きたつどロックダウンを間欠的に繰り返せばよいなどと主張する者もいるが、そのような方策は経済活動の大混乱を招き、感染症以外での疾病や飢餓による死者を増やすだけであり、ある種のマッド・サイエンスの空想である。
 そこで、ウイルスから防護すべき対象を高齢者や免疫機能が低下している病者、乳幼児などに限定してロックダウンのような方法を回避することが、 絞り込み政策の趣意である。ワクチンが開発された暁にも―変異しやすいウイルスゆえ、それ自体至難であるが―、これらハイリスク者に優先接種するが、ワクチン効果は限定的である。

 他方、前者の計画経済的手法は、対人距離戦略に基づく労働力の投入と生産活動を計画的に実施するもので、そのためには企業の自主性に任せる自由市場経済はもはや無力である。(しかし、計画経済は貨幣経済とはうまく両立しない。究極的には、貨幣経済そのものの廃止を展望せざるを得なくなるだろう。)

:そのためにも、重症化を引き起こす要因に関するより精緻な国際的症例研究が急務である。

2020年5月 7日 (木)

拙速すぎる新薬承認

 未だ収束しないCOVID-19の治療薬として、レムデシビルとアビガンという内外で開発された二つの新薬が有望な選択肢として浮上してきている。それ自体は朗報のように見える。しかし、およそ薬剤の公的な承認には作用・副作用の科学的な検証が不可欠である。
 米系ギリアド・サイエンシズ社製レムデシビルは現時点で最も有望とされ、日本でも国内での治験を事実上飛ばした特例承認という形で申請から3日でスピード承認された。が、この薬剤に関しては「回復期間を短縮するが、死亡率は減少しない」という研究結果も出ている(参照記事)。他方、副作用としては、急性腎障害、肝機能障害など重大なものが指摘されている。
 これに対し、国内では日系富山化学社製アビガン(抗インフルエンザ薬としては承認済み)を待望する声も強い。これには、著名人がアビガンを服用して治ったとする情報のほか、国内製品を偏重するある種の「製薬ナショナリズム」のようなものも影響しているようである。
 しかし、アビガンのCOVID-19感染症への転用について、日本の薬害オンブズパーソン会議は、先行類似薬タミフルとの比較で、非劣性(作用が劣っていないこと)を示せず、プラセボと比較した堅固な有効性の証明にも失敗した一方、胎児毒性、催奇形性等の副作用もあるとして、科学的根拠の乏しい過剰な期待を集めていることに警鐘を鳴らし、COVID-19感染症に対するアビガンの臨床試験以外の使用(「観察研究」として行われている適応外使用)や承認申請された場合の対応について、慎重に行うことを求める意見書を厚労省に提出している(意見書全文へのリンク)。
 コロナ・クライシスは、製薬資本にとってはコロナ・チャンスでもある。一方で、膨大な数の患者側からは治療薬への切実な願望もある。しかし、患者数が膨大だからこそ、ひとたび薬害を引き起こせば、その害も甚大である。厳格な治験と迅速な治療薬の普及。これは二律背反する命題であるが、両命題を止揚しなければならない。

[追記]
中国では、中医薬の併用が治療効果を上げたとの報告もある(参照論文)。また、日本の東洋医学会も漢方薬の効果に関しての研究を開始した(参照記事)。医学の東西融合(拙稿)という見地からも、歓迎すべき動きである。

2020年4月26日 (日)

自宅隔離の制度化を

 COVID-19の感染確定者の急増に伴い、医療機関が逼迫し、医療崩壊が近いことを受け、民間ホテルを借り上げて、軽症者を隔離する「宿泊隔離」という便法が東京都及び首都圏を中心に導入されてきている。

 しかし、この新たな一策も、感染確定者がさらに増加すれば、いずれ逼迫し、崩壊することは必然である。なぜなら、COVID-19感染者にあっては全体の8割が軽症ということが現時点でも真ならば、その数は膨大であって、それに対応するだけの民間宿泊施設を確保することはできないからである。そのため、今から軽症者に対する自宅隔離を早急に制度化する必要がある。
 とはいえ、自宅隔離は想像されるほど容易ではない。自宅隔離が自宅放置になると、自宅隔離者が家族に感染させたり、禁令に反して出歩いたりして、感染源となりかねないからである。
 中国武漢市では2月初めにオフィスやスタジアム、体育館を転用した仮設病院に軽症者をすべて隔離し始めてから、感染拡大が劇的に鈍化したという経験を踏まえ、中国の専門家は、自宅隔離ではなく、施設隔離を推奨している(参照記事)。
 また、韓国では軽症者を公共施設などを転用した「生活治療センター」という特別施設に隔離する制度を立ち上げたという(参照記事)。ただ、このような中間的な隔離制度もすべての軽症者をカバーし切れるものではない。
 
 一方、元来、病気の症状の軽重基準があいまいで、軽快・増悪の変動をしやすいうえ 、 COVID-19における「軽症」というのが曲者で、ここでの「軽症」とはおおむね重症肺炎を発症していない状態を指すらしいので、「軽症」とはいえ、高熱や頭痛に苦しむ症例や、「軽症」と見えたものが数日で急変・死亡する症例すらも現れている(参照記事)。よって、自宅隔離者も常に医療と間接にはつながっている必要がある。
 
 日本の場合、保健所を有効活用できるはずである。一案として、いわゆる市中感染者が増大し、すでに“時代遅れ”となった臨時の「帰国者・接触者相談センター」を廃止し、新たに常設組織に近い「自宅隔離者療養支援センター」(以下、「センター」と略称)に改編する。これは全国共通の枠組みとして、国が主導して整備する。
 センターは保健所が地元医師会の協力を得て運営し、対象者に対する隔離の開始と終了を指示する権限を持ち、本人に対しては隔離中の禁止事項・注意事項を記した指示書、同居家族向けには家族としての注意点を詳細に記した手引書を交付する。
 症状が変化した場合は、医師会を通じてセンターと連携する医師の診察を迅速に受け、適宜入院措置も採れるように(そのためにも、先行回復者の早期退院が必要)、インターネットやAIも活用し、隔離者側がセンターに迅速かつ確実に連絡が取れるようにする必要がある。
 韓国ソウル市では人工知能を用いて自宅隔離者に自動電話をかけ、症状の有無を確認する「AIモニタリングコールシステム」を導入するというニュースもある(参照記事)。
 
 なお、宿泊隔離制度も無用なわけではなく、例えば手狭な住居に大家族で居住しているなど、物理的に自宅隔離が困難な人や、現時点軽症でも重症化リスクのある人などは、医師や看護師が常駐する宿泊隔離が望ましい。宿泊隔離はそうした自宅隔離不適者向けの制度として、後方配備しておく。

[追記]
日本は現在でも、症状の軽重を問わず、感染症患者を限られた特別病床を持つ指定病院に隔離するという古典的な発想に基づいて対策しているが―推察すれば、このことが特異な検査抑制策の主要な根拠と見られる―、これはパンデミックには対応できない政策であると同時に、ハンセン病患者に対する終身病院隔離政策のような過ちのもとともなる。今般のパンデミックを機に、感染症対策の根本思想を改め、病原体の感染力や致死性、患者の症状や重症化リスク等に応じて、自宅隔離・宿泊隔離・病院隔離の各手段を法令上柔軟に使い分けできるように制度化する必要があると考える。
 
おわりに: 
 これまで、門外漢ながら、合理性・論理性を欠く政府のCOVID-19 対応への不安から、本欄で種々言論介入してきたが、ここで予見した事態の多くが現実のものとなっていくことに耐えられず、この禍々しいウイルスの話題については、ひとまず本記事を最後に沈黙することにしたい。皆様のご無事をお祈りしつつ。

2020年4月22日 (水)

計画的な検査態勢の強化

 COVID-19との闘いは長期戦になりそうな雲行きであるが、そうなると、計画的な検査態勢の強化が必須となってくるだろう。とにかく無条件の大量検査を求める論調もあるが、それが最良の策とは思えない。むしろ、目的と対象を分類したうえで、計画的に態勢強化を図る必要があるように思われる。
 以下、素人考えの謗りを恐れず、概括的なアウトラインを示してみたい。

A:臨床検査
 これは、感染・発症者の治療を前提とする検査である。よって、対象は何らかの疑い症状が出ている人である。その場合、症状の軽重は問わない。方法は、PCR検査による。
 この検査が過度に抑制されないよう、原則としてすべての内科診療所または総合病院内科をCOVID-19疑いの患者が受診し、受検できる診療態勢(物理的感染防止策及び専用外来/時間帯開設等)及び検査態勢(保健所を通さない検査の導入)を整備する。

B:予防的検査
 これは、予防を目的とする検査である。その対象は、検査時点で疑い症状はないが、感染すれば重症化するリスクのある人(医学的リスク者)及び医療関係や介護関係、理美容関係(客と近接してサービス提供する)のように、職業上感染リスクの高い人(職業的リスク者)である。
 このうち、医学的リスク者に対しては、抗体検査の方法による。この検査は、可能な限り、全国の全該当者をカバーする。よって、郵送検査キットや保健所による訪問検査などの支援態勢を整備する。
 職業的リスク者の中でもハイリスク者と濃厚接触する医療・介護関係者は、PCR検査の定期的な受検を義務付ける。理美容関係者の場合は、希望者のみの任意で足りるかもしれない。[7月1日内容一部改訂]

C:疫学的検査(調査)
 これは、全体的な感染状況を把握し、対策を立てるための疫学的調査を目的とする検査である。よって、その対象者は無作為抽出される。都道府県ごと、可能ならば市町村ごとに長期間にわたり定期的に実施する。方法は、抗体検査による。


[付記]
上掲三種の検査のうち、BとCのカテゴリーは都道府県でなく、国が主導しなければ実行は困難であるので、中央感染症検査センター(以下、センター)のような新機関を設立する必要があるかもしれない。また、Aのカテゴリーについても、検査容力の弱い自治体のために、センターが支援する必要があるかもしれない。

[追記]
厚労省は5月、COVID-19疑いでの受診目安を改訂し、より緩やかな要件に変更した。小さな一歩であるが、そもそもCOVID-19には特有の明確な初期症状がないとされるので、患者の受診抑制につながる「受診目安」自体が検査抑制効果を持ってしまう。むしろ、医師向けの「診断目安」を明示したほうが合理的であろう。

推定感染ポイントの特定

 最近のCOVID-19感染者は「感染経路不明」が多いと言われるが、科学的な究明の断念に近いこのような言葉は聞きたくない。いわゆるクラスター感染の場合は、感染者が共通して立ち入っていた施設等が感染ポイントとして公表されるけれども、それとて、見えないウイルスのことであるから、あくまでも推定にとどまる。
 その点、日本では当初、科学者たちもクラスター追跡により感染拡大を防止できると高をくくっていたせいか、いわゆる「三密」のような日本人好みの標語が出回っているが、これはクラスターの生じやすい典型的な例を漠然と一般化しただけで、標語が独り歩きすると、かえって油断を招く。
 クラスターが生じていない場合でも、感染者の過去二週間程度の行動歴を精査することで、推定感染ポイントを特定することはできるのではないだろうか。それによって、どのような場所が危険かを市民が知ることは、行動指針になる。日本のように緩やかな行動制限策を採る場合には、必須であろう。さらに、将来の制限解除後の予防的行動指針ともなる。
 そこで、推定感染ポイントは「三密」のように一般標語化することなく、その場所の特徴を個別具体的に開示するべきである。ただし、感染者のプライバシー侵害と推定ポイントの施設等に対する風評被害に留意することは必要であるから、感染者が特定されたり、施設名が発覚するような情報の開示は避けなければならない。

2020年4月20日 (月)

都道府県別抗体検査を

 COVID-19をめぐる政府のばくち的な場当たり対応に苛立つ中、あまり注目されていない小さな朗報があった。それは、厚労省が月内にも抗体検査による感染状況調査に着手するというニュースである(参照記事)。
 これまで、検査(PCR検査)の総件数が少ないため、感染の全体状況が把握できず、毎日公表される統計上の感染者数がどの程度信頼できるのかわからないことが、国民の不安とともに、油断を招いてもきたのである。まるで目隠しをされているような状態である。
 しかし、ついに統計上も感染者総数1万人を越えた今、抗体検査を実施して、既感染者の実数を推定することが不可欠である。それにより、感染者実数が公式数値よりはるかに多いのか、あるいは案外公式数値に近いのか、それにより今後の見通しと対策も異なってくるだろう。
 ただ、記事によると、「対象地域や規模などを調整」とあるのが気になる。対象地域や規模を絞りすぎれば、単なる参考値にすぎなくなる。公式統計上も感染者数は都道府県ごとに相当なばらつきがあるので、抗体検査も都道府県別に行うべきであろう。
 もっと言えば、都道府県内市町村ごとにも相当のばらつきがあるので、市町村ごとの抗体検査により推定値が出れば、市民にとって自身の居住地や勤務地の感染状況がわかり、行動指針としても役立つだろう。

参考記事:コロナ感染者、実際は50倍超か 米加州の抗体検査で推計

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