〆新計画経済論

2016年1月13日 (水)

新計画経済論・総目次

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前言 ページ1

第1章 計画経済とは何か

(1)計画経済と市場経済 ページ2
(2)計画経済と交換経済 ページ3
(3)マルクスの計画経済論 ページ4

第2章 ソ連式計画経済

(1)曖昧な始まり ページ5
(2)国家計画経済 ページ6
(3)構造的問題点 ページ7
(4)政策的問題点 ページ8

第3章 環境計画経済の試み

(1)環境計画と計画経済 ページ9
(2)非官僚制的計画手法 ページ10
(3)環境計画経済の実際① ページ11
(4)環境計画経済の実際② ページ12
(5)環境計画経済の実際③ ページ13
(6)環境計画経済の実際④ ページ14

第4章 計画経済と企業形態

(1)社会的所有企業 ページ15
(2)公企業と私企業 ページ16
(3)企業の内部構造① ページ17
(4)企業の内部構造② ページ18
(5)企業の内部構造③ ページ19

第5章 計画経済と企業経営

(1)公益的経営判断 ページ20
(2)民主的企業統治 ページ21
(3)自治的労務管理 ページ22
(4)二種の企業会計 ページ23
(5)三種の監査系統 ページ24

第6章 計画経済と労働生活

(1)労働配分 ページ25
(2)労働基準 ページ26
(3)経営参加 ページ27
(4)労働紛争 ページ28

第7章 計画経済と消費生活

(1)生産様式と消費様式 ページ29
(2)消費計画の概要 ページ30
(3)消費事業組合 ページ31
(4)計画流通と自由流通 ページ32

第8章 計画経済とエネルギー供給

(1)エネルギー源の民際管理 ページ33
(2)エネルギー供給計画 ページ34
(3)エネルギー事業体 ページ35
(4)エネルギー消費の規制 ページ36

第9章 計画経済の世界化

(1)グローバル計画経済 ページ37
(2)貿易から経済協力へ ページ38
(3)世界経済計画機関 ページ39
(4)環域経済協力機関 ページ40

第10章 計画経済と政治制度

(1)経済体制と政治制度 ページ41
(2)世界共同体の役割 ページ42
(3)世界共同体の構成単位 ページ43
(4)政経二院制 ページ44

2016年1月12日 (火)

新計画経済論(連載最終回)

第10章 計画経済と政治制度

(4)政経二院制
pencil計画経済と政治制度の関係で、最後に残された難問は、代表制のあり方である。この点、旧ソ連のような行政指令型の計画経済では、経済計画は行政機関の任務であったから、旧ソ連の国家計画委員会のような計画行政機関が用意されれば足り、代表制の問題は回避される。
 もっとも、そのような強大な権限を持つ行政機関を代表機関がどのように監督し得るかという民主的な監督の問題は発生するが、これは代表制そのものというより、行政監督の問題である。
 しかし、企業体の自主的な共同計画を軸とする新しい計画経済にあっては、そうした共同計画を策定する代表機関の制度や構成いかんが重要な問題となる。
 最もラディカルな制度としては、企業体の代表機関に一本化することが考えられる。例えば、業界ごとの代表者で構成する代表機関である。これは職能代表制に近い構成となる。
pencil特に、「合理的な共同計画に従って意識的に行動する、自由かつ平等な生産者たちの諸協同組合からなる一社会」という定義に基づくマルクスの共産主義社会論は、生産協同組合(企業体)自身が代表機関を持つという構制を導くであろう。
 マルクスによれば、共産主義社会では、(一)統治機能は存在せず、(二)一般的機能の分担は何らの支配をも生じない実務上の問題となり、(三)選挙は今日のような政治的性格を完全に失う。そして共産主義的集団所有の下ではいわゆる人民の意志は消え失せ、協同組合の現実的な意志に席を譲るとも論じている。イメージとしては、協同組合が合同して直接に執政するような体制である。
pencilしかし、経済計画はそれだけでも多くの審議と調整を要する作業であるので、他の一般政策の審議は別途代表機関を設けて機能分担することが合理的であろう。その意味で、経済計画機関は一般代表機関とは別立ての企業代表機関として設置運営し、一般代表機関は経済計画機関の策定した経済計画に承認を与えるのみにとどめるのがよい。
 こうした計画(経済)/一般(政治)の二本立て代表機関―政経二院制―は、世界共同体とそれを構成する領域圏のレベルにセットで設置されることになるだろう。ただし、環域圏は経済計画そのものよりも、その枠内での連関地域経済協力を主任務とするから、固有の経済計画機関が設置されることはない。

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政経二院制といっても、両者の関係は完全対等ではなく、政治院である民衆会議が言わば上院として計画の最終的な承認権を保持することになるだろう。また世界共同体レベルにおける経済計画機関(世界経済計画機関)は、二院制構造の例外として、世共総会(世界民衆会議)の下部機関としての位置づけが強くなる。世共の場合、政治的統合性が重視されるからである。ただし、この場合も世界経済計画機関は官僚制機関ではなく、世界の生産事業機構体で構成する合議機関である。

2016年1月 4日 (月)

新計画経済論(連載第43回)

第10章 計画経済と政治制度

(3)世界共同体の構成単位
pencil世界共同体=コモンウェルスは地球全域に及ぶ一つの計画経済主体であるわけであるが、それが非効率・非民主的な巨大集権体とならないためには、分権的に体制を構築する必要がある。
 地球的分権のあり方にも種々のものが考えられるが、まずは民衆の生活圏に最も近い領域圏を基礎に、近隣・周辺領域圏のまとまりとしての環域圏を広域単位として想定するのが、最も合理的かと思われる。
pencilこのうち、世界共同体の基礎構成単位となる領域圏は、伝統的には国に相当する政治単位であるとともに、一定の領域を束ねる計画経済主体でもある。例えば、日本領域圏は日本の政治単位であるとともに、日本領域の計画経済主体である。
 この領域圏のレベルにはそれぞれ単一の経済計画機関(経済計画評議会)が置かれ、世界経済計画機関が設定した経済計画に沿って、それぞれ領域圏内の経済計画を策定することになる。領域圏経済計画評議会と世界経済計画機関は完全な上下関係にはないが、前者は後者の受託機関のような関係に立つ。
pencilグローバル計画経済は、こうした縦関係の計画だけでなく、横のつながりとしての経済協力関係を内包しているが、そうした経済協力は地理的・文化的にも共通項を共有する領域圏がまとまる連関地域を単位に行なうことが合理的である。
 そのような領域圏の連関地域的な協力体となるのが、環域圏である。環域圏の分け方もまた種々あり得るが、筆者はかねてより、世界をアフリカ、ヨーロッパ‐シベリア、アメリカ‐カリブ、東方アジア‐オセアニア、西方アジアの五つに区分することを提案してきた。
pencilこのような連関地域の経済協力体は資本主義の現在でも存在しているが、それはしばしば連関地域ごとの経済競争関係に転じ、最悪の場合、排他的な経済ブロックと化し、国際戦争の要因ともなる。他方で、国境を越えてグローバルに跋扈する多国籍資本はこうした連関地域経済協力とは調和しない。
 グローバル計画経済における環域圏は競争的単位でもなければ、旧コメコンのような国際分業圏でもなく、相互補充的な経済協力に特化した、すぐれてグローバル計画経済に特有の政治単位と言える。

2015年12月28日 (月)

新計画経済論(連載第42回)

第10章 計画経済と政治制度

(2)世界共同体の役割
pencil 旧ソ連の行政指令型計画経済は、いくつかの構成共和国の連邦体ではあったが、ソ連邦という単一の主権国家一国限りでの計画経済として運用されていたから、その目標は一国の経済開発に置かれていた。そのため、一国を越えたグローバルな計画経済の構想は、ついに現れることがなかった。
 これに対して、新しい自主的な計画経済は、地球環境の保全を何よりも優先する環境計画経済という性格上、地球規模で実施される。そのために、その究極的な計画も全世界を包摂するようなレベルで協調的に行われる必要がある。そのような協調主体が、すでに何度も言及している世界共同体である。
pencilここで、そうしたグローバルな計画経済をより実効的に行なうには、世界連邦のような本格的な世界政府機構を設立したほうが直截的ではないかとの疑問が向けられるかもしれない。世界連邦はまさに世界を統一する政治機構であり、かねてより主として世界平和の観点から提唱する運動も存在している。
 しかし、前回も述べたとおり、行政指令型でなく、企業体による自主的な共同計画を軸とする新しい計画経済にあっては、国家という枠組みが無用であったのと同じように、世界連邦のような連邦国家的な枠組みも無用であり、世界連邦制度はグローバルな計画経済を上部で保証する政治制度としてふさわしいものとは思われない。
pencilこの点、世界共同体とは英語ではWorld Commonwealthと表されるが、このCommonwealthには「連邦」という政治的な意味もあり、現存する制度としては、英国とその旧植民地諸国で結成する国際機構・英連邦はCommonwealth of Nationsと呼ばれている。これと同様に、World Commonwealthを「世界連邦」と訳しても誤りとは言えない側面もある。
 ただ、語源的にCommonwealthとはCommon=共通+wealth=富という構成であり、「世界共通の富」という経済的な含意も込められている。このようなグローバルな人類共通の富の計画的な生産・分配に関わる政治体として、世界共同体というものが想定されてくるのである。

2015年12月21日 (月)

新計画経済論(連載第41回)

第10章 計画経済と政治制度

(1)経済体制と政治制度
pencil前章まで新しい計画経済のあり方を検討してきたが、最終章となる本章では、そうした新しい計画経済体制を上部で保証する政治制度のあり方について見ておきたい。
pencil一般的に、経済体制と政治制度の間に論理必然的な関係があるかと言えば、はっきりとイエスとはならない。しかし、緩やかながら論理的な対応関係を見出すことはできる。
 例えば、資本主義は自由経済を志向するから、経済規制を最小限にとどめる自由主義的な政治体制、特に議会制と結ばれた時に最も効果を発揮する。これは、議会制が多額の金銭をつぎ込む公職選挙を土俵とする金権政治の代表的制度であるからして、資本が自らの保証人となる政党・政治家を通じて経済界の総利益を保持するという持ちつ持たれつのパトロニッジ関係を構築しやすいからである。
 他方、旧ソ連のような行政指令経済に基づく社会主義経済体制は、経済司令塔となる政府と計画行政機関を必要とするので、相当に集権的な国家体制と結びつく。逆に諸政党の寄合である議会制はこの体制には適合しにくい。
pencilこれに対して、新しい計画経済は行政指令主義ではなく、計画経済の対象企業自身による自主的な共同計画を軸とするから、計画行政機関は無用である。そこからさらに、国家という制度そのものも不要とするかは、一つの問題である。
 ここでは、貨幣制度の廃止が鍵となる。通貨高権を失った国家はもはや国家ではないとすれば、貨幣経済によらない共産主義的計画経済は国家制度とは両立しないことになる。
 もっとも、国家廃止は必ずしも計画経済特有のものではなく、貨幣経済は残すが、国家の通貨高権は廃し、私的通貨制度に一本化する最もラディカルな自由市場経済論に立つなら、少なくとも理論上は国家なき資本主義も成り立つことになる。しかし、実際のところ、国家の権威づけを一切持たない私的通貨が安定的に通用するとは想定しにくく、これはまさに机上論にどとまろう。
pencil結局のところ、自主的な計画経済体制は、国家制度によらない全く新しい政治制度を上部構造に持つことになると考えられるが、そのグローバルな大枠がこれまでにも言及してきた世界共同体である。

2015年12月14日 (月)

新計画経済論(連載第40回)

第9章 計画経済の世界化

(4)環域経済協力機関
pencil世界共同体とは一つの国家のような統合体ではないため、世界経済計画といっても、それは領域圏の地域的なまとまりである五つの環域圏間での経済協力関係を内包する。そうした環域的な経済協力関係は、資本主義的な商業貿易に代わるものとして、環境計画経済において極めて重要である。
 煎じ詰めれば、環境計画経済とは、世界経済計画を基本に、個別的な領域圏計画経済と横断的な環域間経済協力が有機的に連関しながら運営されていく地球的な経済システムと言える。
pencilその意味でも、経済協力圏としての環域圏は重要な単位であり、そうした環域間経済協力を担う機関として、世界経済計画機関とは別途、環域圏経済協力評議会のような実務機関を設置し、常時経済協力関係を維持する必要がある。 
 具体例を挙げれば、自動車なら世界経済計画に示された指針に従い、各々環域圏内での中心的な領域圏が生産し、環域圏内で融通する。その結果、自動車メーカーが世界的なシェアーを巡り競争し合うという関係はなくなり、生産活動はそれぞれの環域圏内で完結することになる。
 ただし、それは硬直的なルールではなく、例えばアフリカのように独自の自動車メーカーが存在しないところでは―独自に育成される可能性は資本主義経済下よりも開かれるが―、隣接するヨーロッパから調達するというように、環域圏を越えた協力関係の存在も否定されない。
pencil環域圏のもう一つの重要な役割として、食糧農業分野での経済協力がある。共産主義的な食糧生産は貿易によらず、各領域圏で自給的にまかなうことが基本であり、現実にも共産主義はそれを可能とするが、農業の発達状況と生産量は地理的条件及び天候にも左右され、不均衡を完全には免れないことから、食文化に共通性のある環域圏間で不足産品を融通し合う協力関係は不可欠である。
 そうした協力関係をグローバルに調整する専門機関として世界食糧農業機関が置かれる。これは現存国連機関である国連食糧農業機関(FAO)の業務を引き継ぐものであるが、この機関は調整機関にとどまり、現実の協力実務は環域圏ごとに設置される食糧農業評議会が行なう。

2015年12月 8日 (火)

新計画経済論(連載第39回)

第9章 計画経済の世界化

(3)世界経済計画機関
pencilグローバルな計画経済の実務機関となるのは、世界経済計画機関である。これは各領域圏の計画機関である経済計画評議会の総本部に相当する機関でもあり、最終的に完成された暁には、同計画機関が策定した世界経済計画の総枠内で各領域圏の経済計画が策定されるシステマティックなものとなる。
pencilこの世界経済計画機関は全世界の領域圏で構成する世界共同体の専門機関の位置づけを持つが、現存国連諸機関のような官僚制的行政機関ではなく、各領域圏の経済計画評議会と同様に、生産企業自身の共同計画を策定する合議制機関である。
 その構造は各領域圏の経済計画評議会の相似形となる。すなわち、世界経済計画機関の評議部である計画理事会は環境負荷産業分野の生産事業機構の世界組織である生産事業機構体の代表者で構成され、討議を経て世界経済計画を策定する。
pencilこの生産事業機構体とは、例えば鉄鋼なり自動車なり計画経済の適用を受ける生産事業機構で作る世界組織である。資本主義経済にはこのような組織は存在しないが、現存する類似例を挙げるとすれば、世界鉄鋼協会(World Steel Association)とか国際自動車工業連合会(Organisation Internationale des Constructeurs d'Automobiles)といった国際的な業界団体をイメージすればよい。
 資本主義体制の下では、こうした国際業界団体はあくまでも業界ごとの国際的な利益代表組織であり、生産活動そのものの調整を行なうことは国際カルテルに当たり、むしろ禁止される。しかしグローバルな計画経済下の生産事業機構体は単なる業界団体ではなく、まさに世界計画経済の主体組織となるのである。
pencilこうして世界経済計画機関が策定した経済計画は、世界共同体総会で承認審査を受けて発効すると、世界法(条約)に準じた規範性をもって各領域圏を拘束し、各領域圏レベルでの経済計画の参照指針となる。

2015年11月30日 (月)

新計画経済論(連載第38回)

第9章 計画経済の世界化

(2)貿易から経済協力へ
pencilグローバルな環境計画経済が実現された暁に世界経済上生じる最も大きな変化は、貿易という経済行為の消滅である。これはちょうど「一国」レベルでは商業が消滅するのとパラレルな関係にある。貿易とは国際的な商業活動の謂いであることからすれば、当然の事理である。
pencil貿易が消滅するといっても、完全に「一国」レベルでの自給自足体制に移行するわけではない。食糧を含めた不足物資の海外調達は継続される。しかし、それはもはや貿易という商業的な形態においては行われず、無償の経済協力という形態で行われる。ただ、経済協力といっても、資本主義経済下の経済協力のように「途上国」に対する例外的な「援助」として実施される恩恵的経済行為ではなく、原則的・日常的な互恵的経済行為として行われることに注意が必要である。
pencilそのような試みの不完全な先例として冷戦時代にソ連を中心とした社会主義経済圏の経済協力体制(コメコン)があったが、これは形式的な分業体制を採ったため、メンバー国の産業構造の偏りを生んだ。環境計画経済における経済協力はそうした形式的な分業によらない地域間協力である。
 実際、前節で述べた世界経済計画はそれ自体が経済協力の全体指針でもあるが、具体的な経済協力は地理的近接性を考慮して近隣経済協力圏のレベルで行われる。これも次章で改めて述べるが、世界を五つに区分した環域圏がそのまま経済協力圏として機能する。例えば、日本の場合は環東方アジア‐オセアニア圏が帰属経済協力圏となる。
pencilこうした経済協力の中でも、食糧に関しては人間の死活に直結し、自然条件に左右されるところが大きいため、通常の経済計画とは別途計画が立てられるが、具体的な経済協力はやはり環域圏のレベルで行われる。
pencilまた経済協力の一環として、エネルギー源となる天然資源の民際管理の問題がある。前章で論じたとおり、天然資源はナショナリズムに委ねず、何者にも属しない無主物として民際管理下に置かれるが、その管理機関として世界天然資源機関が置かれ、持続可能な共同採掘が行われる。世界経済計画はこうした資源の分配計画も包含するものとなる。

2015年11月24日 (火)

新計画経済論(連載第37回)

第9章 計画経済の世界化

(1)グローバル計画経済
pencil前章まで、環境的持続可能性に配慮された新しい計画経済環境―環境計画経済―のあり方について論じてきたが、ここでの議論はさしあたり、「一国」のレベル―続く第10章で改めて論じるように、環境計画経済は「国」という政治単位と両立しない―での計画経済を想定してきた。
 しかし、環境的持続可能性とは正確に言えば、地球環境の持続可能性―つまり、地球が少なくとも内部的な要因から死滅することのないように保持していくこと―を意味するから、環境計画経済は特定の「一国」だけで実践され得るものではない。
pencil環境計画経済は、その究極的な形態においては、まさに地球規模で実践されなければならない。この点において、それは環境的持続可能性を「一国」の政策レベルの課題に矮小化する「環境保護論」とも、また気候変動や生物多様性等々特定の環境課題を個別の国際条約―しかも、批准/脱退は各国の個別判断任せ―を通じて協調しようとする近年の潮流とも異なり、よりいっそう徹底した世界化を目指ざしている。
 そのためには、環境計画経済の世界的な準則となる世界経済計画が必要とされる。それは前章までの議論で前提とされてきた「一国」レベルにおける経済計画の全体的な大枠(キャップ)となるものである。言い換えれば、「一国」レベルでの計画は世界レベルでの経済計画に基づく個別的な割当て(クォータ)の位置づけとなる。
pencilこのような壮大な構想に対しては、果たして数十億人口を抱えるに至った現存地球上でそのような大規模な経済計画を紛議なく実効的に策定することができるのかという「現実主義」からの疑問が示されるであろう。
 たしかに、これは人類がいまだ経験したことのない壮大な経済実験ではあるが、それも現存の主権国家体制を撤廃し、主権国家の連合体にすぎない現存国際連合に代わる「世界共同体」を創設することを通じて、実現の道が開かれると考える。その意味で、環境計画経済と政治制度の関係は重要な論点となるが、これは次章の課題とする。

2015年11月17日 (火)

新計画経済論(連載第36回)

第8章 計画経済とエネルギー供給

(4)エネルギー消費の規制
pencil環境計画経済におけるエネルギー供給計画は、末端需要者のエネルギー消費のあり方にも影響を及ぼす。当然にも、資本主義経済下のように需要者が欲するだけ大量消費できるということにはならない。
pencil特に二次エネルギー源の中でも最も重要な電気の消費は厳正な計画供給制となるが、その場合、事前告知による計画停電のような全体統制的な方法とリミット制のような個別規制的な方法とがある。
 計画停電は大災害時等の非常措置としてやむを得ない場合もあるが、日常的にこうした全体統制的な供給体制を採ることは、電力供給システムが整備されている状況では不必要である。
pencilそこでリミット制が選択されるが、その適用方法は一般世帯と企業体のような大口需要者とでは異なる。大口需要者については、電力事業機構との個別協定により日量のリミットを設定するが、一般世帯では個別協定ではなく、予め通知された約款で定められた日量上限を超えた場合、事前警告のうえ自動的に停電するという方法によることが望ましい。
 おそらく、環境計画経済が確立される頃には、こうしたリミット制を支える技術革新が進み、末端需要者が電力使用量をリアルタイムで把握でき、リミットに接近すれば警告されるような測定装置が一般世帯にも普及すると予測されるから、現時点で想定されるような煩雑さはないものと思われる。
pencil同様のリミット制はガスにも導入されるが、環境計画経済はオール電化とかオールガス化といった消費エネルギー構成の偏向は許さず、消費エネルギーバランスが考慮される。そのためにも、電力供給とガス供給は統合的な事業体(電力・ガス事業機構)を通じて包括的に行われることが考えられてよい。
pencilとはいえ、こうしたエネルギーの大量供給体制はいかに計画化を進めても環境的持続可能性にとって十分ではないから、エネルギー自給システムの普及も併せて考慮されなければならない。具体的には自家発電装置の常備や地方集落では薪火のような伝統的発火手段の復活併用などである。

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