〆体験的介護保険制度批判

2018年9月 2日 (日)

体験的介護保険制度批判(最終回)

 7月末、家族の永眠をもって介護が終了したことで、当連載も役割を終えることとなった。介護保険制度の下、在宅介護・施設介護の全過程をおよそ七年間で体験したことになる。
 この間、介護保険制度の不備欠陥を痛感する場面に数知れず当面し、細かな批判をしようと思えばキリがないので、最終回となる本稿では、在宅介護及び施設介護からそれぞれ一つずつ、改正すべき点を挙げて締めくくりとしたい。

○在宅介護に関して

 現行介護保険制度は要介護度を五段階に分けて、それぞれの保険限度額を定め、その範囲を越えれば自費という仕組みである。これは、社会保険でカバーするサービスを極力抑制しようとする趣旨で、介護保険制度の姉妹制度とも言える健康保険には見られない介護保険独特の仕組みである。
 つまり、最初から社会保障費抑制という緊縮財政的な仕掛けをしてあるのが介護保険の特徴である。これは高度成長期只中の時代に気前よく導入された健康保険とは異なり、バブル経済崩壊後の「失われた十年」の時代に付け焼刃で導入された介護保険ならではの特質と言えよう。
 しかし、このような利用制限策は必要なサービスが保険でカバーされないという当事者の不満の元となっている。そこで、在宅介護に関してはそもそも利用制限策を設けず、介護保険適用事業者と非適用事業者を分別し、適用事業者に関しては、特に制限を設けずに介護保険を利用できるようにすることを提案したい。
 ただし、介護保険適用事業者の選定に関しては、人員配置など重要事項に関して一定の基準を設け、事業者の申請により、事業主体の経営理念や財力、サービスの質などを総合考慮して優良事業者を慎重に選定することとする。
 これに伴い、現状、選任は利用者の任意ではあるが、サービス利用を限度額内に収める言わば門番役として事実上不可欠となっているいわゆるケアマネージャーの制度は廃止し、利用者の視点に立った相談員的なソーシャルワーカーに取って代える。

 さらにサービスの内容的な面では、在宅介護=介護ヘルパーという画一的なサービスにとどまらず、便利屋的な御用聞きサービス、さらには独居老人などの話し相手となる傾聴サービスなど、在宅サービスの多様化にも踏み込むべきである。

○施設介護に関して

 現行施設介護は、介護保険施設なる概念の下、介護老人保健施設(老健)・介護老人福祉施設(特養)・介護医療院(旧介護療養病床)の三種の施設を介護保険利用施設として認定する仕組みである。
 これら三種の施設はいずれも比較的安価で介護サービスを提供するという点で、中・低所得者にとっては不可欠の施設となっている面はあるが、安価な分、経営環境は厳しく、そもそも供給が追いつかず(特に特養)、サービスの質の向上も困難で、独自サービスも実施しにくいという欠陥を免れない。
 施設介護の選択肢としては、基本的に自費となるいわゆる有料老人ホームもあるが、これは営利性が強く、入居一時金名目で相当額を前払いさせるという慣習が定着しており、利用者とのトラブルも少なくないと言われる。しかし、市場経済システムを前提とする限り、施設経営の安定とサービス向上のためには、営利事業者に委ねるほかないだろう。
 そこで、介護保険施設なる概念を廃止にし、有料ホームに一本化しつつ、在宅介護サービスに関して述べたと同様、ここでも一定の基準の下、介護保険適用施設を選定し、適用施設では利用料金も介護保険でカバーできるようにすることが望まれる。
 その際、施設介護に関しては、利用限度額を設定するため、要介護度の認定とそれぞれの限度額を定めておくことはあってよいと思われる。
 施設の選定基準としては、職員の配置基準のほか、入居一時金を徴収しないこと(退所時に返還される保証金は可)、利用料金の上限額(月額)がおおむね30万円未満であること、施設内での看取りが可能であることを条件とする。

 さらに施設介護サービスの内容的な面では、介護施設での医療行為の幅を広げ、注射・点滴程度の医療行為は施設内で完結できるようにすること、さらに摂食機能を維持するため、言語聴覚士の配置を強く奨励することを提案したい。

 なお、現行介護保険施設のうち、最も役割・性格が曖昧な老健は医療的処置の必要性が高く、通常の介護施設では介護しにくい人や終末期に入った人を専門的に看護する高齢者看護施設(健康保険適用)という新たな制度に衣替えすることが望ましい。一方、療養病床は医療の枠組みであるから、介護保険でなく、健康保険でカバーされるべきである。

 

※上述のとおり、当連載は役割を終えたため、数本の追記を含め、すべての過去記事を削除致しました。拙文への長年のご愛顧に感謝申し上げます。

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