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2019年3月14日 (木)

弁証法の再生(連載第6回)

Ⅱ 弁証法の再発見

(5)ヘーゲル弁証法②
 ヘーゲル哲学を支える思考法としての「ヘーゲル弁証法」は、主著『精神現象学』の主題ではないが、そこにおける思考の方法として展開されている。その特徴をひとことで言うならば、二元論の超克ということに尽きる。
 ただし、対立する二項を妥協的に接合する折衷主義でも、二項の最大公約数を抽出する平均主義でもなく、かといって第三項を単純に追加するのでもない、対立する二項から内在的に新たな項を導出するような高次の思考法である。
 ある命題(定立)とその反対命題(反定立)を俗に言う「良い所取り」によって折衷するという思考法は一時的な対立の緩和には役立つが、まさに対立の一時的休戦にすぎない。そこで、より進んで対立命題の最大公約数を抽出するという平均主義は、命題が数学的に割り切れる性質のものであるならば、いちおうの解決をもたらすかもしれないが、そうでなければ、割り切れない結論として対立は未解決である。
 そこで、二項対立を超克するべく、新たな第三項を導入しようとするのは自然な思考の流れであろうが、その際に、定立/反定立命題とは異なる第三項を外部から追加するなら、最初の二項対立が三項鼎立に転化する。これで最初の二項対立は相対化されたとしても、新たに三つ巴の戦いとなりかねない。
 これらの思考法は対立命題を基本的に固定したまま対立の緩和・解消を目指す点では、「悟性的」であるが、「総合」というプロセスを欠いている点で思考法としては不全であるから、根本的な対立の解消にはつながらないのである。
 その点、ヘーゲルは対立する命題が互いを批判吟味する中で相互媒介によって交差しつつ、最終的に対立を止揚するという思考法を提唱する。止揚によって立ち現れるものは第三項ではあるが、最初の二項と無関係に創出された第三項ではなく、最初の二項が内部的に保存されているような第三項である。
 このような思考法は折衷主義や平均主義のように対立回避的な妥協ではなく、対立を通じて相互に結びつき、最終的な対立の止揚に至るという点では対話的であり、2000年前のソクラテス式問答法を再発見したものとも言えるかもしれない。ただ、ヘーゲルは実際に問答するのではなく、自己の内部でこうした問答法的な思考を実践しようとする点で近代的な弁証法ではある。
 ヘーゲルは、こうした思考法を思考法そのもの、あるいは新たな「論理学」の体系として提示したのではなく、彼の言うところの「絶対知」を導出するための思考過程として実践したのである。簡単に言えば、弁証法的思考の反復継続を通じて最終的に到達する最高次の学的知こそが、哲学的な絶対知だというのである。

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