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2018年12月30日 (日)

言語発展論(連載第19回)

第3部 新・世界言語地図

二 世界祖語の絶滅

 「語環」による言語分類に入る前に、現存する世界の民族言語(絶滅言語を含む)に共通する祖語―世界祖語―は再構できるかという問題にも一言しておきたい。もしそれが可能なら、新たな世界語の創案にも大きく寄与するだろうからである。
 この問題に関しては、20世紀初頭、イタリア人言語学者アルフレード・トロンベッティが10万年乃至20万年前に使用されていた人類祖語の可能性を正式に提唱して以来、言語学界の傍流においてではあるが、研究が続けられてきた。
 近年では、アメリカの言語学者メリット・ルーレンらが、コイサン諸語やオーストラリア先住民諸語など、現存民族言語の中でも特に古い発祥を持つと考えられる諸言語の音韻や語形の比較対照により、数十個の世界語源を抽出したとするが、言語学界主流ではヘテロドクシカルな超仮説として扱われているようである。
 人類のアフリカ発祥・出アフリカ仮説に立つならば、アフリカで最初に言語を獲得した現生人類の集団内で共有された原始言語Xは、出アフリカ集団によってアフリカの外へ持ち出されたことは間違いなかろうが、その後、人類の世界的拡散・定住の過程で原始言語Xは忘却され、相互に疎通できないほど多岐にわたる民族言語に分岐していったのだろう。
 現在では原始言語Xが絶滅して超歴史的な年月を経過しており、古い発祥を持つといってもせいぜい数千年程度と考えられる諸言語の音韻や語形の比較だけからXを再構することは至難となっているものと思われる。仮に再構できても、部分的にとどまり、そこから直接に体系的な文明言語に再編することは不可能だろう。
 かくして、現状は世界祖語再発見への期待を封じつつ、「語環」による現存民族言語の再分類に取り組むべき時であろう。ただし、包摂概念である「語環」概念によって、現存言語間の内的な関連性がより解明される可能性はあるかもしれない。

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