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2018年10月21日 (日)

神道と政治―史的総覧(連載最終回)

八 議会神道の時代

議会神道と新国粋主義
 国政選挙を通じて議会に影響力を拡大していった神社本庁は、2000年以降、明確な政治的アジェンダを推進していくようになる。特に首相の「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」発言で波紋を呼んだ2000年の森内閣、さらに自民党の右傾化を決定づけた2001年の小泉政権の成立が大きな分水嶺となった。
 ちなみに、森首相の上記問題発言はまさしく議会神道の推進マシンである神道政治連盟国会議員懇談会の席上でなされたものであり、発言の後に「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知をしていただく、その思いで・・・・私たちが活動して三十年になった」と続く総括発言の一部であったのである。
 こうした総括を受けるかのように、小泉政権時代の2005年に神社本庁が公表した国政選挙での候補者支援条件には、①皇室の伝統の尊重②改憲論議の推進③教育基本法の改正④安保・領土問題の解決⑤戦没者追悼新施設の建設反対⑥夫婦別姓への反対など、冷戦終結後の1990年代に隆起した新国粋主義のアジェンダが広く網羅されている。
 注目されるのは、⑤の戦没者追悼施設新設への反対、すなわち靖國神社への戦犯者合祀を支持することで、靖國神社との連携も図られていることである。戦前の国家神道における象徴的な宗教施設であった靖國神社は戦後も存続を許されたが、神社本庁に属さない単立の特殊な宗教法人とされる一方で、神社本庁側が靖國神社崇敬奉賛会に加入する形でクロスしている。
 この靖國神社崇敬奉賛会は靖國神社を支持する準政治的な組織として1998年に設立され、それ自身が独自のアジェンダを擁する靖國神社の政治的影響力拡大に一役買ってきた組織であるが、神社本庁も法人会員としてこれに加わることで、一体となって靖國神社に力を貸している。
 こうした議会神道の力をいっそう決定づけたのは、2012年の安倍政権の成立である。この政権はトップの安倍首相自身が神道政治連盟国会議員懇談会の会長職を務める、まさに神道と政治をつなぐ結節点にある人物であり、閣僚にも同懇談会メンバーが多数起用されてきた「神道政権」である。
 近代内閣史上最長政権となることも見込まれる安倍政権下で、議会神道は最盛期を迎えたとも言える。そうした中、上記「支援条件」の形で示されたアジェンダの中でも最もハードルの高い改憲が視野に入ってきている。
 ここでの神道界の最大関心事は、戦後憲法の柱の一つであり、国家神道の復活にとっての桎梏でもある政教分離原則の排除である。これによって神道を事実上の国教として再興することも可能となるからである。実際、神社本庁は世俗の改憲推進団体と連携しつつ、加盟神社境内で改憲署名活動を展開するなどの動きを見せているが、これについては神道界内部からの批判も提起されている。
 また神社本庁自身内紛・脱退問題を抱えるほか、神社本庁に属さない神道団体との緊張関係など、宗教全般に見られがちな分裂にも見舞われており、神道界が文字どおりに一枚岩となって議会神道を推進しているわけではないが、全般的に見て、神道と政治が戦後史上最も近接しているのが現時点と言えるであろう。

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