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2018年9月 9日 (日)

神道と政治―史的総覧(連載第23回)

八 議会神道の時代

「神道指令」と国家神道の解体
 戦時体制下で、全体主義の精神的支柱となった国家神道は、敗戦とそれに続く連合軍の占領下で解体される運命にあった。その根拠となったのが、終戦の年1945年12月に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)より発せられたいわゆる「神道指令」(以下、単に「指令」という)である。
 「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件」という長い正式名称からも、国家神道の解体こそが日本の民主化における鍵であることを連合国軍が占領の早い段階で認識していたことが窺える。
 「指令」の目的はまさしくその名称どおり、神道を国家から切り離し、信教の自由と政教分離を軸とする世俗的民主体制へ移行させることにあった。これは明治憲法の廃棄と並び、明治維新当時の国家神道宣言とも言うべき「大教宣布の詔」を遡及的に取り消す革命的な転換を意味した。
 しかし「指令」は当初、神道行事の禁止などハーグ陸戦条約に明記された非占領地における信仰への不干渉という占領統治の原則に抵触する疑いのある内容を含んでいたため、事後的に適用範囲が緩和され、修正を余儀なくされた。とはいえ、「指令」と新憲法に明記された政教分離原則の影響は大きく、国家神道の存続余地はなくなったのである。
 国家神道の司令塔であった神祇院は廃止され、代わって全国の神職で結成していた財団法人・大日本神祇会(旧全国神職会)などが母体となり、全国の神社を束ねる民間団体としての神社本庁が設立された。民間団体でありながら、官庁並みに「庁」を称するのは、神道側の「指令」に対する対抗的団結意識の現われとも言える。
 実際、神社本庁の設立に当たっては、神道の存続に危機感を持った神道関係者や右翼思想家らを中心に、慎重な討議を経て、「指令」に抵触しない形で神道界の統一団体を結成することが目指されたのである。
 その結果、神社本庁は法律上宗教法人であるが、神社の単なる業界団体ではなく、皇室に直結する伊勢神宮を「本宗」と仰ぐ準公的団体として、政教分離原則を明示した新憲法下の議会政治の中で神道が新たな力を獲得していく過程において、隠然たる影響力を発揮することになる。

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