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2017年11月19日 (日)

「ヒトラー逃亡説」の科学性

 2014年に米国政府がナチス指導者ヒトラーに関わる戦後の捜査資料を機密解除したことで、ここ数年、改めて「ヒトラー逃亡説」がクローズアップされ、米国のTV番組Hunting Hitler(History Channel)が取り上げるなど、関心を呼んでいる。
 「ヒトラーの死(自殺)」は歴史的には確定事実とされているが、それがなおも疑われるのは、第二次大戦末期、ベルリンを制圧したソ連軍主導の検視の杜撰さと、呉越同舟状態の連合国内部ですでに生じ始めていた冷戦に向かう相互不信のせいで、「ヒトラーの死」が科学的に確証されなかったためのようである。
 それで、戦後も一部で「ヒトラー逃亡説」が一種の陰謀理論として語られてきたが、公式資料の公開によってある程度検証が可能となった。とはいえ、当時ヒトラーの死を疑っていた米国諜報機関も追跡を断念し、打ち切った案件である。Hunting Hitlerは、その追跡を改めて民間で再開し、ヒトラー逃亡説を裏付けようとする試みであるが、資料の検証だけでは科学性を担保できないだろう。
 今後も国際的に手配される戦犯やテロ首魁は出てくるだろうが、その生死は世を惑わす陰謀理論の題材とされやすい。先進的なDNA鑑定などを駆使した国際的に中立な検証体制を構築する必要があるだろう。そうした技術も枠組みもなかった70年前の「ヒトラーの死」は、なお科学の余白のままである。

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