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2017年8月20日 (日)

オセアニア―世界の縮図(連載第20回)

第二部 現況~未来

(9)中国のオセアニア進出
 オセアニア地域への中国人の進出は、清朝時代の19世紀後半以降、いわゆる苦力〔クーリー〕労働者を含めた移民の形で進み、特にオーストラリアの主要都市には大規模なチャイナタウンが形成された。その他ハワイをはじめとする島嶼地域にもそれぞれ地場のチャイナタウンが形成されていった。
 こうした華人移民は、土着した場所で財力を蓄え、政治にも進出する。パプアニューギニアで1980年代と90年代に三度首相を務めたジュリアス・チャンや、キリバスで2003年から16年まで大統領を務め、気候変動問題に関してリーダーシップを取ったアノテ・トンなどは華人系の代表的な政治家である。
 こうした華人移民集団とは別に、現代中国は国家単位でオセアニアに進出する動きを強化している。中国はかねてより、太平洋方面にアメリカを意識した二本の「列島線」なる拡大的防衛戦略ラインを引いてきたが、近年はそうした消極的な防衛ラインを超えた積極的な太平洋進出政策を展開する。
 これは、豪米同盟を基軸とする覇権が確立されてきたオセアニアに中国が割り込み、とりわけオセアニア最大のチャイナタウンを擁するオーストラリアとの経済関係を足場に、オセアニアにおけるアメリカのプレゼンスを相対的に低下させる狙いを伴っていると見られる。
 それと同時に、1971年の中国の国連加盟・台湾の脱落後も台湾と外交関係を維持する小国が少なからず残されているオセアニアにおいて、台湾に対する外交的優位性を確立するための攻勢という側面もあるであろう。
 小国の側でも域内覇権国であるオーストラリアへの従属を避けたい思惑から、中国の経済進出を利用しつつ、産業基盤の弱さを補填し、国の開発を進めたい思惑が一致する。中でも、中国との関係が近年とみに高まっているのが、フィジーである。
 フィジーは独立以来、中国とは友好関係にあるとはいえ、2006年の軍事クーデター以来のバイニマラマ政権は民主化圧力をかけるオーストラリアを回避する形で中国との経済・軍事関係を強化しており、特に軍事援助が突出していることが注目される。
 こうした中国のオセアニア進出に対して、先住民衆の間から反中感情の表出もなくはない。06年にソロモン諸島で発生した反中暴動はその予兆であった。中国の進出が経済援助的な性格を超え、覇権主義的な色彩を帯びるならば、全般的に反中感情が高まる恐れもあるだろう。

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