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2017年8月23日 (水)

オセアニア―世界の縮図(連載最終回)

第二部 現況~未来

(10)環境的滅亡危機
 当連載は「世界の縮図」というサブタイトルのもとに展開してきたが、最終章はまさに世界的な問題である気候変動がオセアニアの島嶼国家にもたらしている国家存亡の危機に関する。
 オセアニアを危機にさらしているのは、気候変動に由来する海面上昇である。海面上昇の影響はもともと低海抜の環礁が多いオセアニアの島嶼国家を直接的な水没の危機にさらす。中でもキリバスとツバルである。いずれも多数の環礁で構成された典型的なオセアニアの島嶼国家である。
 特にキリバスはいち早く政府もこの問題に取り組み、2003年から15年にかけて、キリバス政府や地球環境ファシリティー、国連開発計画、日本政府などが共同で5500万ドルを投入し、三段階に分けてキリバスの水没危機を軽減するプログラム「キリバス適応計画」を実施してきた。
 その間、2010年には同国の首都タラワ環礁で、キリバス政府の主宰による「タラワ気候変動会議」が開催され、気候変動の原因や弊害について世界に強く訴えかける即時行動を求める「アンボ宣言」を同国のほか日本や中国を含む12か国共同で採択した。キリバスは小国ながら気候変動問題では大きなリーダーシップを発揮しようとしている。
 その一方で、キリバス政府はまさに国家の消滅をも視野に、域内のフィジーへの全国民移住計画も検討している。こうした国家の環境的滅亡危機によって生じる難民―環境難民―は、従来の戦乱や飢餓から生じる難民とは異なり、温暖化が進行した未来世界を先取りする現象である。
 他方、ツバルは海面上昇に対して脆弱な地質構造を持つため、一説によれば海面上昇の進行により、最初に水没する危険が指摘されている。ただ、ツバル政府は全国民移住計画には消極的で、気候変動への世界的な取り組みにより海面上昇を抑制することを強く求めている。
 国家存亡の危機に至らないまでも、塩害による廃農や満潮時の浸水、海岸侵食の進行などはマーシャル諸島など他のオセアニア諸国でも大なり小なり見られるところである。こうした問題の解決はオセアニア域内の課題ではなく、まさに地球規模の世界的な課題である。
 最後に、ツバルのエネレ・ソポアガ首相が2015年の国連気候変動会議(COP21)で演説を締めくくった次の言葉で稿を閉じることしたい。

 ツバルのために行動しましょう。なぜなら、私たちがツバルを救えば、ツバルも世界を救うからであります。

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