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2017年8月 6日 (日)

仏教と政治―史的総覧(連載第35回)

十二 現代政治と仏教

日本の「議会政仏教」
 日本では明治政府による廃仏毀釈政策の結果、中世以来の伝統仏教勢力が急速に閉塞することとなり、仏教は神道に劣後する二級宗教に転落した。その一方で、昭和に入ると、伝統仏教勢力の外部で新興の仏教団体を創立する動きが見られた。
 それらの教団には日蓮宗・法華系標榜宗派が多いことが特徴であるが、そこには、既存宗派の枠にはまらない日蓮宗の持つ在野的性格が影響しているのかもしれない。しかし、戦時体制下で神道系も含む新興宗派全般に対する当局の監視が強まり、創価学会のように幹部が検挙され、弾圧される場合もあった。
 戦後は、憲法で保障された信教の自由の下、新興仏教団体が無数に創立されていく。そうした中で、戦前創立の大規模な教団の中には、議会政治に直接間接に参加するものも現れた。いち早く系列政党を結成し、国政に進出したのは法華系の創価学会(以下、学会と略す)である。
 学会は1956年に初めて傘下参議院議員を出したのを契機に、64年には正式に公明党を結成し、67年総選挙で25名の当選者を出して以来、中道を標榜する議会政党として今日まで定着、1990年代以降は、たびたび連立政権の一角を担うに至っている。
 ちなみに近年、学会同様に系列政党の幸福実現党を通じた議会参加を試みているのは仏教ベースの独異な教義を持つ幸福の科学であるが、現状、少数の地方議員を擁するものの、国政では地歩を築いておらず、現時点で国政レベルへの進出で学会以上の成功を収めている仏教系団体は存在しない。
 また、戦前に法華系の霊友会から分派した立正佼成会は戦後の選挙運動を通じて主として自由民主党(自民党)を支援してきたが、ライバル関係にある学会系の公明党が自民党と連立を組むと流動化・個別化し、旧民主党・民進党系の支持に傾斜していると言われる。
 このように日本の戦後政治は、伝統仏教勢力以上に新興仏教勢力と議会政とのつながりにおいて、他の仏教諸国にも見られない独自の展開を見せている。もっとも、こうした言わば「議会政仏教」は、憲法が信教の自由とともに規定する政教分離原則との緊張関係を常にはらんでおり、特に教団系列政党の政権参加は憲法上も機微な問題を提起することは否定できない。
 ところで、90年代半ば、松本と東京で神経ガスのサリンを散布する化学テロ事件を起こし、世界を震撼させたオウム真理教は、日本では珍しい上座部仏教に近い教義を持つ新興仏教団体であったが、かれらも当初は国政参加を狙い、選挙に参加するも目的は達成されなかった。それを契機に教団は過激化・武装化に走り、テロ事件を惹起するに至ったとされる。
 平和なイメージの仏教がテロに関与することは稀であり、教団被害対策に当たった弁護士一家惨殺など敵対人物を標的とする多数の凶悪事件を組織的に起こしたオウム真理教はあまりにも特異な存在であったが、「国家」の樹立まで目論んだとされる教団は現代日本における議会政仏教への過激なアンチテーゼだったのかもしれない。

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