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2017年3月26日 (日)

オセアニア―世界の縮図(連載第15回)

第二部 現況~未来

(4)オセアニアン・アメリカ
 アメリカはオセアニアに本土を持たないが、重要な海外領土を持つことで、この領域において一個のプレゼンスを保持している。これを「オセアニアン・アメリカ」と呼ぶことができる。
 この語は国際関係用語としては知られていないようであるが、先述したように、オーストラリア及びニュージーランドとともに太平洋安全保障条約の当事国となっているアメリカはオセアニアの枢要な構成国にほかならない。
 オセアニアン・アメリカを構成する統治体は一元的ではなく、いくつかの種別から成っている。その中心は言うまでもなく、全米50州の一つであるハワイ州である。ハワイは19世紀末にアメリカの関与したクーデターで独立王国が転覆された後、準州として編入され、1959年に50番目の州に昇格している。
 次に自治的未編入領域として、北マリアナ諸島とグアムがある。両者は合わせて東南アジア方面から先史時代に渡ってきたと見られるチャモロ族を先住民とする島嶼域で、9世紀頃には石柱遺跡ラッテストーンで知られる古代王朝も成立していたが、その後の歴史は分かれた。
 北マリアナ諸島はスペイン領からドイツ領、日本の信託委任領を経て第二次大戦後、アメリカの信託統治領に渡り、86年の信託統治終了に伴い、コモンウェルスという形式で自治領となった。他方、グアムはスペイン支配の後、米西戦争に勝利したアメリカの植民地に渡り、1950年に限定的な自治地域となったが、コモンウェルスの地位は認められず、自治権はなお制約されている。
 最後に、非自治的未編入領域ながら、事実上の自治権を付与された米領サモア(東サモア)である。「事実上」というのは、連邦法上は正式に自治権が付与されないまま、1967年に自主憲法が施行されているからである。皮肉にも、正式に自治権を持たないサモアが最も自治的であるが、代償として開発は進んでいない。
 こうした複雑な構成のオセアニアン・アメリカの中核は当然にも、正式の州であるハワイにあり、まさしくアメリカはオセアニアにも張り出していることになる。これは、アメリカの歴史的な戦略である太平洋・東アジア進出の象徴とも言える。
 オセアニアン・アメリカは総体として軍事的にも、最古の米統合軍である太平洋軍の枢要地であり、同軍司令部はハワイに置かれ、グアムは島の三分の一が米軍基地用地という「基地の島」となっている。そうしたこともあり、グアムでは北マリアナ同様のコモンウェルス昇格が実現せず、まさに要塞植民地的状況が続いている。
 このように、オセアニアン・アメリカの総面積は決して大きくないながら、アメリカの世界戦略において不可欠の領域となっており、独立運動は全般に低調で、今後も現状維持が続くと考えられる。

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