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2017年3月23日 (木)

アフリカ黒人の軌跡(連載第2回)

一 「残アフリカ」した人々

豊穣だったアフリカ
 アフリカ黒人の発祥地は言うまでもなくアフリカ大陸であるが、そこは同時に人類そのものの発祥地と想定されている。中でも今日の南アフリカ共和国を中心とした南部アフリカは旧人を含めた古人骨の宝庫であることからして、南部アフリカがまさしく人類発祥地である可能性は高い。
 ここが人類発祥地であったからには、その気候は人間にとってよほど最適のものであったと推定され、およそ20万年前に誕生したと推定される現生人類も、そうした良好な気候に支えられて大いに繁殖したものと思われる。
 しかし、繁殖は人口増・食糧難の要因となったところへ、温暖化によりアラビア半島に水上移動可能な環境が開けたことから、まずはアラビア半島・中東方面へと「出アフリカ」する集団が現れたと想定される。他方、「残アフリカ」した保守的集団の子孫が今日のアフリカ黒人となった。
 この「残アフリカ」組は、おそらく人口増の中でも食糧を確保する狩猟採集術に長け、あえて「出アフリカ」する苦難を選択する必要を感じなかったのだろう。実際、南部アフリカには今日でも狩猟採集を中心とした伝統的生活様式を守る少数民族が暮らしており、その伝統の強さを感じさせる。
 しかし、やがてこの「残アフリカ」組もその内部で人口増が生じたため、次第にアフリカ大陸を東西に北上して大陸全土に散っていき、新天地で多様な民族集団を形成し始めた。
 今日では南極を除けば世界最大級の過酷な砂漠であるサハラ砂漠ですら過去には豊かな緑地であったと推定されるごとく、先史のアフリカ大陸は現在よりはるかに豊穣な大地であったため、アフリカ黒人諸族は各地に拡散し繁栄し得たのである。
 ところで、最初の現生人類が果たして今日のアフリカ黒人と同様の身体的特徴を持つ人々であったかは不明であり、特に肌色はアフリカ大陸がまだ温暖であった時代にはさほど色濃くなく、アフリカ黒人はアフリカが全体として熱帯化していく過程に適応して形成されたとも推定できる。
 そうした意味で、アフリカ黒人は最初の現生人類に最も近いとはいえ、その純粋な子孫であるとまでは言えないであろう。ただし、現生人類発祥地に近い地域にその後もとどまった諸族は、形質的にも言語的にも原初現生人類の特徴をよく保存していると想定される。

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