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2017年2月12日 (日)

オセアニア―世界の縮図(連載第13回)

第二部 現況~未来

(2)オーストラリアの地域覇権
 地球を全体として概観した場合にその島嶼部に相当するオセアニアにあって、オーストラリアは最大の「島」にして、最大人口を要する準大陸国家である。そのため、その規模のゆえにオセアニア地域では盟主的地位にある。
 英国植民地からの独立に始まり、先住民族を殺戮/強制同化する民族浄化によって白人中心国家を築いていったその歴史的歩みはアメリカ合衆国に類似しているが、1970年代まではアメリカ以上に明確に白人優先主義―白豪主義―を採り、非白人移民の制限と先住民差別を公然と行なっていた。
 しかし、独立後も後ろ盾であり続けた英国の欧州共同体(EC→現EU)加盟を契機に、70年代半ばに白豪主義政策を多文化主義政策に転換して以降、オセアニアにおける独自の地位を確立し、政治経済的な盟主として国際関係上も重みを増していった。
 軍事的にも6万人近い現役兵力を有する国防軍はオセアニア地域最大であり、域内紛争やオセアニアに連なる東ティモール紛争の解決にも介入関与してきた。一方、2000年代以降はアメリカに協力し、アフガニスタンやイラクにおける軍事作戦にも派兵するなど、域外派兵も増発している。
 後に改めて見るように、アメリカはハワイ州を拠点にオセアニアにおいても領土を有し、「オセア二アン・アメリカ」と呼ぶべきオセアニアの構成国でもあることから、オーストラリアとしても歴史や価値観の近似性が高いアメリカとは協調・同盟関係を取りつつ、オセアニアにおける盟主的地位を維持する戦略である。
 一方で、1980年代には労働党政権の下、非核地帯設定を主導し、85年の南太平洋非核地帯条約の締結に結実させ、核政策ではアメリカと一線を画す姿勢を見せている。ただし、アメリカは同条約を批准していないため、域内のアメリカ領土に条約の適用はなく、アメリカと自由連合を締結している準独立諸国も批准していない。
 加えて、オーストラリア自身もアメリカとの太平洋安全保障条約を通じてアメリカの「核の傘」に依存する政策を事実上採用していると見られ、国際社会での核兵器禁止に反対するなどの両義的態度が見られる。
 経済面では近年オセアニアへの進出を活発化させている中国との結びつきを強め、中国が最大貿易相手国となっている。国際金融分野でも中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するなど、中国との結びつきは加速している。
 こうして、オーストラリアは政治・軍事⇔アメリカ、経済・通商⇔中国という形で、米中両大国を機能的に両天秤にかけるバランス政策を通じてオセアニアにおける地域覇権を保持していかんとしているように見える。
 なお、2016年の国民投票によりEU脱退を決めた英国が欧州を離れ、再び独自的な地位を回復する見込みとなったことで、現在も英連邦加盟を通じて友好を維持する豪英関係が新たな展開を見せるかどうかが注目される。

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