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2016年9月 4日 (日)

オセアニア―世界の縮図(連載第1回)

 世界を大地域ごとに見渡した場合、南太平洋地域とほぼ重なるオセアニアは、相対的に世界で最も平和な地域と言える。風光明媚なビーチ・リゾートでくくられがちなイメージもあながち誤りでない。しかし、オセアニアは地球上の他地域から隔絶された地上の楽園ではない。
 オセアニアは今日でも、旧帝国主義列強の仏・米・英の海外領土を多数残しているし、太平洋戦争に名を残すとおり、近代世界戦争の戦場にもされた。戦後は、米・英・仏の核実験場として利用されたことを教訓としつつ、非核地帯条約により、アフリカ大陸と並び、地球上で核兵器を持たない地域としての名誉に浴している。
 一方で、オセアニアに広がる低海抜の小島嶼国家の中には、海面上昇現象のために将来的な水没・滅亡の可能性が予測される国も存在するなど、現代的な地球環境問題の最前線ともなっている。
 ちなみに、ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』の舞台となる独裁帝国は「オセアニア」であるが、これは第三次世界大戦の結果、世界に出現した三大帝国(残り二つはユーラシアとイースタシア)の一つという想定である。 
 それはアメリカを主軸に、イギリスや南アフリカなども含み込み、オーストラリアを中心とした地理的概念としてのオセアニアにまで広がった超帝国であって、所謂オセアニアと同義ではない。
 ただ、今日のオセアニアは、地域の実質的な盟主格であるオーストラリアに加え、この地域になお多くの領土を持つ米・仏、発展した中国も含めた経済列強の触手が競争的に伸びる草刈場となってきており、オセアニアを勢力圏に含み込んだオーウェル的超帝国が将来出現しないという保証はない。
 オセアニアの誕生から歴史、現況から未来を通覧すれば、そこに世界の縮図を見ることになる。本連載は、域内人口4000万人弱、世界人口の0.5パーセント程度という小さな地域でありながら、世界の縮図として様々なパースペクティブを提供するオセアニアの私家版地誌である。

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