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2016年9月 7日 (水)

オセアニア―世界の縮図(連載第2回)

第一部 誕生~歴史

(1)先住者たち
 かつては無人地帯だった先史オセアニアへの人類の移住波は、大きく二つあると見られている。その第一波は、人類学上オーストラロイドと総称される人種に属する集団の移住である。この集団は、しばしばネグロイド、コーカソイド、モンゴロイドに続く第四の人種と呼ばれることもある。
 かれらの原郷は南インドと見られ、紀元前5万年前後の旧石器時代に、今日のスリランカ、スンダ列島を経由し、当時は包括的な大陸(サフル大陸)を構成したと推定される今日のニューギニア、オーストラリア方面に移住してきたと考えられる。
 肌が浅黒く彫りの深い容貌を特徴とするこの集団の代表的な子孫は、オーストラリア先住民(アボリジニ)とニューギニアの主要民族であるパプア人である。かれらは小さな部族ごと多岐に分かれ、言語的にも多様性が高い。特にパプア諸語においてこの傾向は著しく、相互の系統関係の立証が不能なほどである。
 このうちオーストラリア先住民は広大なオーストラリア大陸中央の平原部に定着し、多数の部族に分かれて、巡回型の狩猟採集生活を営む民族として固定されていった。パプア人はニューギニア島の熱帯雨林、山岳地帯の定住民となった。
 そのニューギニア島を中心とするメラネシアとはギリシャ語で「黒い島々」を意味するように、肌の色の黒い住民を特徴とする。このことは、メラネシアは当初、パプア系集団の周辺島嶼への移住によって形成された地域であったことを意味する。

 こうしたオーストラロイド系集団に続く移住第二波は、モンゴロイド集団によるものであった。時期的にははるかに遅く、紀元前4000年は下らない。かれらはラピタ文化と呼ばれる共通の土器文化を発達させた。
 かれらの原郷は台湾と見られ、その点では、台湾先住民や東南アジアのマレー系諸民族などとも共通祖先を持つ集団である。その痕跡は言語にも残されており、今日、オセアニアにおいて大言語集団を成す大洋州諸語は包括してオーストロネシア語族マレー・ポリネシア語派に分類されている。
 かれらは遠洋航海術に優れた海洋民族であり、そのことがかれらの太平洋地域全域への拡散を可能にした。その拡散の軌跡はラピタ土器の分布に示されており、メラネシアに属するビスマルク島(現パプアニューギニア領)を起点に東方へ拡散していき、今日のポリネシア人になったと推定される。また起点となったメラネシアでも先住のパプア系民族と混血し、メラネシアを一部ラピタ化している。 
 ポリネシア人の東方拡散はさらに続き、ハワイやニュージーランド、イースター島、さらに一部は遠く南米にまで及んだものと見られる。「多くの島々」を意味するポリネシアがオセアニア海洋部では最大域を持つゆえんである。
 なお、オセアニア北部、「小さな島々」を意味するミクロネシアの形成過程については不明な点が多いとされるが、この地域は東南アジアとの境界域でもあることから、フィリピン、インドネシア方面からのマレー系住民の移住があった可能性は高い。他方、この地域の住民はポリネシア系やメラネシア系が混淆しており、オセアニア域内からの移住も含めた多様な形成過程を持つと見られる。

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