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2015年10月11日 (日)

犯罪精神医学事始(連載第14回)

13 病理性暴力犯罪者の治療的処遇⑥

 病理性暴力犯罪者の中には、統合失調症や鬱病等の精神疾患を背景としている者―精神疾患性暴力犯罪者―が一定数含まれており、その程度が重篤である場合は、現行法上は心神喪失者または心神耗弱者として刑法39条の適用により無罪または必要的減軽となる。しかし、多くの場合は完全責任能力者として原則通り処罰される。
 この点、以前に提唱したとおり、心神耗弱の下位概念として「心身減弱者」の概念を増設して、裁判所の裁量で減軽できるようにすべきであるが、いずれにせよ、精神疾患性暴力犯罪者は矯正施設と医療施設とに分散的に収容されることになる。

 このうち、医療観察処分を受けて医療施設に収容される重症者については、当然ながら医師の管理下で治療を受けることになるが、この場合でも、彼/彼女が一定の犯罪行為を行なったことに変わりはないので、矯正的な働きかけが不要となるわけではない。その点でも、この種の患者の治療計画は矯正の観点を踏まえたものでなければならず、それを効果的なものとする犯罪精神医学の確立が不可欠である。

 一方、矯正施設に収監される精神疾患性犯罪者に関しては、通常の矯正処遇を受けながら投薬等の必要な治療も行なうという形で、治療的処遇を受けるべきことになるが、刑務作業に重点を置く懲役刑は本来治療的処遇には不向きである。その点、精神疾患性犯罪者向けの刑務作業は作業療法的な意義が認められるものを課すように工夫されるべきである。
 また矯正施設に収監中の精神疾患性犯罪者の症状が悪化した場合は、医療刑務所に移監する必要があるが、医療刑務所の数も、そこで勤務する精神科医師の数にも限りがあるため、場合によっては刑の執行を停止し、改めて医療観察に付すといった柔軟な制度を組む必要があるだろう。

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