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2014年5月21日 (水)

文学と科学

 人気連載漫画『美味しんぼ』で、福島県の原発被災地で鼻血を出すなど体調異変を訴える人が多いと叙述されたことが波紋を呼んだが、この問題は漫画のような広い意味の文学と科学の関係性を改めて考え直す好個の素材である。
 所詮は創作と割り切るなら、どうということはないが、地名・人名とも架空のファンタジー作品ならともかく、創作とはいえ実在の地名・人名が登場するリアル作品では、科学的に未検証の内容を安易に断定的に叙述すべきではないと考える。
 特に放射線医科学の分野は、放射線事故が日常頻発しないことからも―頻発しては困る!―、未解明なことが多い。結果、放射線への恐怖も手伝って、放射線障害が「伝染」すると信じているような人も存在するありさまである。そうした非科学的な迷妄は差別の元ともなる。
 科学の余白を埋めたいという欲求は、まさにそれを仕事とする科学者のみならず、作品のインパクトを強めたい創作家にもあり得ることだが、十分な科学的証明なしに余白を性急に埋めようとすることはどんな場合でも避けるべきである。それは先のSTAP細胞問題の教訓でもあるはずだ。

[追記]
この点、原発事故直後には福島県からの避難者の二人に一人ほどが家族などの鼻血を体験している事実を挙げ、これを、原発から飛散した放射性セシウムなどが結合した金属粒子が鼻の粘膜に付着する「接触被爆」の現象とする医師の指摘もある(神戸新聞2014.7.14)。

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