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2012年4月13日 (金)

犯罪と非処罰(連載第10回)

9 更生保護について

pencil保護観察も広い意味での更生保護に含まれるが、本章で言う更生保護は狭い意味におけるそれ、すなわち「矯正処遇」を完了した者に保障される社会復帰のサポートのことである。
 「矯正処遇」は、最も軽い「第一種」でも更新されれば最長で5年に及び、「第二種」と「第三種」では1Uがそれぞれ3年と5年と比較的長いうえに、更新された場合の上限もともに10年と長期にわたるため、社会復帰に当たっては十分なサポートを必要とする。
 一方、「矯正処遇」は更新付きユニット制を採る反面として、今日の自由刑におけるような「仮釈放」の制度を持たないため、「矯正センター」からの退所者を保護観察に付することはできない。そこで、非権力的サービスとしての更生保護が厚く保障されなければならないのである。

pencilかかる狭義の更生保護は社会サービス体系の一環を成すものであるから、犯罪と処遇の対応関係を法定する「犯罪法典」とは別立ての「更生保護法」に根拠を置き、同法に基づいて設立される公益法人である「更生保護協会」が実施機関となる。
 その対象者は、基本的に「第二種矯正処遇」または「第三種矯正処遇」を受けて「矯正センター」を退所した者であるが、「第一種矯正処遇」で更新を受けて退所した者も含む。また「第三種矯正処遇」に引き続く「終身監置」の「本解除」を受けた者で、緊急的な保護を必要とする者も含めてよいであろう。
 こうした更生保護は任意のサービスであるから、サービスを希望する者は退所前に「矯正センター」を通じて、または退所後に直接に前記「更生保護協会」に申請する。申請を受けた協会では、その傘下にあって更生保護の実務を担う各地の「更生保護会」を指定し、サービスを提供する。
 そのサービスの中心は住居の提供と就労支援であるが、家族関係などの環境調整やカウンセリングが必要なケースもある。従って、「更生保護会」には常勤職のソーシャルワーカー(以下、SWと略す)のほか、非常勤を含むカウンセラーも配置される必要がある。
 「更生保護会」に配置されるSW、すなわち「更生保護SW」という専門職はまだ全く確立されていないが、これは通常のSWとは異なり、犯罪と処遇に関する深い知見を要するため、独立した専門資格として養成することを検討しなければならないであろう。

pencil更生保護サービスの中で最も困難なのは、就労支援である。この点で問題となるのは、現在「前科者」に対して法律上課せられる多種多様な職業上の資格制限である。こうした制限は日本法上とりわけ多く、その総数や数百に及ぶとも言われる。このことが一般就職の困難な「前科者」の就労可能性をいっそう狭め、ひいては生活難や自暴自棄からの再犯を誘発していることは明白である。
 「非処罰」の構想の下における「処遇」は「処罰」ではないから、そもそも「前科」という概念自体が消滅する。従って、特定の犯罪により有罪判決が確定したこと自体が特定の職業上の適格性を喪失させるような場合(例えば、弁護士法違反の罪で有罪判決が確定した弁護士など)を除き、職業上の資格制限は存在しない。
 とはいえ、「前科」の概念は消えても犯罪を犯したという「犯歴」そのものを消すことはできない以上、社会一般に伏在する「犯罪者」への差別的偏見にさらされる更生保護対象者の就労は決して容易でないと想定される。
 そこで、更生保護サービスにおいても、単に就労を斡旋する消極的支援にとどまらず、更生保護対象者自らが集団的な自助事業を起こすことを助成したり、適性が認められた者は「更生保護会」の職員として雇用したりする形で、積極的支援を目指す必要があるだろう。

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