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2012年2月10日 (金)

〈反差別〉練習帳(連載第43回)

実践編

レッスン8:性差別(続き)

例題6:
(35歳以上の独身者に対する質問)中高年独身者に対する差別が存在すると感じたことはあるか。

(1)ある
(2)ない

 中高年独身者であるということがそれ単独で被差別理由になるかというと断定しかねるかもしれないが、従来から独身だと家を借りにくいとか、金融機関から金を借りにくいといったことは言われており、独身者は社会慣習上半人前扱いを受けるという差別はかねてより伏在しているように思われる。
 ところが近年、東京23区などで、独身者向けワンルームマンションの建設を規制する政策が推進されるなど、政策的にも独身者差別―それもこのように結果として居住権を奪うような重大な差別―が前面に立ち現れるようになったことは注目に値する。
 このワンルーム規制政策は、ワンルームの独身住民は地域の活動に参加しないとか、マナーが悪い、旧住所地から住民票を移さないため住民税が徴収できないなどの正当化理由を掲げているが、それらはどれも取って付けたような理由づけにすぎず、転嫁的差別に当たる疑いの強い政策である。
 要するに、これは独身者を社会的に半人前として劣等視し、居住規制を通じて間接的に地域社会から排除することによって、既婚者及びその家族の優越的地位を再確認しようという、前回も見た法律婚絶対主義に根差す新たな差別政策にほかならない。
 ただ、こうした独身者差別がなぜ本レッスンの主題である性差別と関連するのかいぶかる向きもあると思われる。たしかに独身者には男性も女性もいるわけであるが、独身者差別をもう少し立ち入って分析してみると、それは「女を妻帯しようとしない男」と「男に妻帯されようとしない女」に対する差別である。この「妻帯」という語が曲者であって、露骨に言えば「女を妻として所有する」という意味合いを含んでいる。
 つまり、男は女を妻として所有して一人前という女卑思想をベースに、妻を所有しようとしない(または所有できない)「男らしくない男」と、男に妻として所有されようとしない「女らしくない女」をばっさり切り捨てにするのが、独身者差別の正体なのだ。
 もっとも、社会通念上はどちらかと言えば中高年独身男性が独身者差別の最大標的となりやすいことから、独身者差別は「男性差別」の一種と解釈できるかもしれない。ただ、そう解した場合でも、それは女性差別と全然無関係なのではなく、すでに過去のものとなったはずの男尊女卑思想が「独身者差別」に姿を変えて残されているものと考えられる。
 とはいえ、近年、男女を問わず中高年独身者は急増しており、2009年度内閣府世論調査によれば、「結婚は個人の自由であるから結婚してもしなくてもよい」と考える人の割合が70パーセントに達しているとのデータからすると、日本人の保守的な結婚観にも変化の波が見られるようである。しかし、政策上は法律婚絶対主義が貫かれている日本社会では、独身者差別の克服もなかなか困難であろう。
 もっとも、例題5で取り上げたような結婚制度とは別立てのパートナーシップ制度の創設が独身者差別の解消につながるとも断言はできず、パートナーを持たない独身者への差別がなおも残存するということもあり得る。
 この点、もしも遠い将来、古い結婚制度が廃されて、パートナーシップ制度に一本化されれば、パートナーを持つか、シングルのままでいるかは社会の干渉を受けない純粋に個人の生き方の問題として定着するのではないだろうか。そうなれば、独身者が社会的に半人前扱いされるようなこともなくなるはずである。

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